皆様、5月に入り少し汗ばむ日も増えてきましたが、お変わりなくお過ごしでしょうか。
どうぞ、体調を崩さないようにお気をつけください。
~院長ブログより②~
アレルギー反応は感情の影響を強くうける。私は笑うことがアレルギー反応を減弱させることを発見し、米国の医学雑誌で報告した。古来、人は生活の中で会話をして笑うことにより、アレルギー反応を減弱させる習慣をとってきたのではないか。しかし今はそれが激減している。対面での会話も減り、インターネットを介したやり取りでは笑いは生まれない。食事は会話をする交流の場で、笑いを生み出す最適なコミュニケーションではないか。そう考えて、食と会話がアレルギー反応に及ぼす影響を以前調べた。
以前、私が治療しているアトピーの方が数人勤務しているA会社で、治療に役立つ習慣はないか、と社長にきかれた。私の治療でアトピーは改善しているが、個人差が大きく改善が早い方と遅い方で感情のずれがあるので、是正したいとのことであった。社長もアトピーがあり私が治療していたが今は治癒している。日々の状況の話をきくと職場に小さな食堂があるが、昼休みに昼食を食べる時間もまちまちで、皆孤食をしていた。そこで昼食を食べ始める時間を決め、全員がそろって食堂に行く。そして社長の「いただきます」の一言で皆食べ始め、食事中に会話をするようにすすめた。最初は皆緊張するので、1分間だけ順番に一人がスピーチすることにした。内容はなんでもいい。とにかく1~2分間話し、それを他の人が食事しながらきく。最初は、周囲の方は聞いているだけであったが、次第に質問も出て、また食事中に会話も多くなってきた。そこでそのスピーチをやめてみたが、やはり会話は多いことが自然に続いた。そのうちに、アトピーの方では症状の改善が全員で早くなってきた。アトピーを媒介した会話の花が咲く。結果的にA会社のアトピーの方は全員治癒した。数週間後にアレルギーのプリックテストをすると、アトピーの方はダニに対するアレルギー反応が有意に減弱し、皮膚症状も改善傾向であった。
食と会話の相乗効果は年齢を問わず効果がある。小学生のアトピーが数名受診している小学校で、給食の時間に言い争いもあり、騒がしいので何か良い方法はないか、と教師にきかれた。詳細をきくとアトピーで食物アレルギーの児と健常な児の間によく喧嘩がある。食物アレルギーの児は除去食で別メニューとなり、更に給食のアレルギー混入物を確認するので時間がかかる。一方健常の児ではそれはなく、配膳はすぐに終わるが、食物アレルギーの児の配膳が終わるまで待たなくてはいけない。そこで言い争いが起こり、険悪なムードになる。そこで配膳中に順番に児童の1分間スピーチをすることを提案した。スピーチの間は静かに聴くと約束させた。最初は騒ぐ児もいたが、自分がスピーチすることで気持ちがわかり、次第に静かに聴くようになった。そのうちに食事しながら児同士が積極的に会話をするようになった。今では食物アレルギーの児と健常の児で隔たりがあったが、それがなくなった。以前は食物アレルギーの児はアトピーもあり食事も痒みを訴えていたが、痒みが減って食事と会話を楽しめるようになった。それは2ヶ月続け、その時点が食物アレルギーの児のアレルギー検査をすると、卵や牛乳アレルギー反応が有意に減弱していた。
最近では孤食して、家庭でも一人で食事をすることが多い。昔は家族そろって、食事と会話を楽しんだ。そのような本来あるべきことがなくて、色々な弊害ができているのが現代ではないだろうか。目には見えない。しかし数字にするとはっきりわかる。ある成人アトピーで家族のある方30人に、最近1週間の夕食の何日孤食をしたかとアンケートをとった。すると驚いた事に20人は1週間孤食で、7名は5日間孤食、3名は2日間孤食であった。1週間孤食のない方はいなかった。30人中16人は仕事をしていて帰宅が遅いのが理由である。しかし残りの14人は夫婦であるが、夫や子供の帰りが遅く孤食になっていた。そこで1週間、孤食やめて家族とともに食べ、食べながらよく会話をするように、こと本人または主婦の合は夫に頼んだ。結果的に10人の方1週間孤食を回避できた。その方達でダニに対するアレルギー検査すると、有意に減弱していた。また自覚症状として痒みも改善していた。
アトピーは激増している。しかし治療としては対症療法の外用薬が流通しているが、中等度以上のアトピーの方々は改善せず、当院を受診する。そのような方々で食事の状態をきくと孤食が多い。家族と食べても会話もなく、食べ終わるとすぐ自室に閉じこもってしまう。そこでそのような重症アトピーの方々に、2週間孤食をやめて、家族と食事をして自分から話すようにお願いをした。7人の方がそれを実行でき、ダニに対するアレルギー反応を実行前と後で検査する有意に減弱していた。1人は著明に減弱していたので、状況をきいた。「会話して話すのがこんなに美味しいとは知りませんでした。今後も続けます。」と喜んでいた。現代は、この効果が欠乏していると心配する。人と人の会話が食を媒介してよりアレルギーを含めた病気の改善することを願う。