初冬の候、いよいよ年の瀬が迫ってまいりました。寒気深まる頃、皆さまお変わりございませんか。
さて、今回の院長ブログは「てくてくサイトに」掲載された「アトピー治療の新しいアプローチ」です。
歩くことで皮膚症状の改善に加え、精神的・身体的な倦怠感の緩和もできるとの事。先生からのメッセージ、最後まで読んでみてください。
私はアレルギー科医として、日々他数のアトピー患者を診察している。アトピーは単なる皮膚疾患ではなく、不眠や不安、精神的・身体的な倦怠感を伴う複雑な病気である。とりわけ「不眠」は大きな問題で、最近では脳へのアレルギー性炎症の影響によって不眠が起こることも判明している。不眠はアレルギーを悪化させ、皮膚を乾燥させて痒みを増強する。すると不眠がさらに悪化するという悪循環になる。海外の文献では、不眠や不安の改善には「歩くこと」が有効であると報告されている。米国の報告では運動不足とアトピーの悪化に相関があり、ハンガリーの報告では歩くことが睡眠の質を高めるとされている。
私は治療中のアトピー患者で、夜間に不眠や不安がある方に、就寝前の10分間歩行を勧めている。ワンルームでも室内を何往復もすれば歩くことは可能で、天候にも左右されない。歩くことで睡眠を導くメラトニンの分泌が増加し、不安を軽減する脳由来神経栄養因子(BDNF)の分泌も促される。実際に、アトピーが改善しない方は熟睡できず、夜に神経が高ぶっているが、睡眠不足や不安の為に症状が悪化していることに自分では気づいていない。それを指摘し、就寝前に10分間歩くようにすると、適度な疲労と気分転換が得られ、不安が消えて安眠でき、皮膚症状も改善する。重症のアトピー患者の多くは、ほとんど運動をしていない。激しい運動や筋トレは難しいが、手軽にできる「就寝前10分間の歩行」は始めやすく、継続しやすい。また、就寝前と時間を決めておくと歩き忘れが防げる。「すべての用事が終わり、あとは寝るだけ」というタイミングが最も適している。10分は難しいが5分から始めるとよい。5分歩けば自信がつき、10分にも挑戦できる。歩くことは健康の基本だが、アトピーの場合、それが忘れられがちである。皮膚を安静に保つために入浴を制限する必要がある場合もあるが、歩くことで皮膚症状の改善に加え、精神的・身体的な倦怠感の緩和も期待できる。治療と就寝前の歩行によって治癒した方々は、その後も歩くことを日課とし、昼間の散歩を続けることで、良好な状態を維持している。




