Daily Archives: 2025年10月20日

院長ブログ⑧愛の介護で達成した重症アトピーの治癒

皆さま、秋も深まり朝晩過ごしやすくなりましたが、いかがお過ごしでしょうか。

 今回のブログはアトピーの介護エッセイです。
以前、作品集に掲載もされたことがあるエッセイです。
どうぞ、お読みください。↓↓

 アトピーはいろいろな治療が混在しており、正しい理解が必要である。関東地方の親しい方が、「子供が重症なアトピーで改善しない。」と相談してきた。こちらでの治療を勧めたが、奥様は通院を希望するもご主人は遠方で受診を了解されず、夫婦で葛藤があった。近医でステロイド塗布の治療では改善せず、夜間の痒みで不眠となり、社会生活や家庭生活の支障をきたしていた。子供は新薬の外用剤でも改善しなかった。

 両親からは頻繁に連絡がきた。「どうしたらよいか。」「関東地方で良い病院を紹介してほしい。」その都度返事をした。治療はこちらでしかできないので、通院して治療をすれば改善することを、何度も説明した。こういうコンサルタントもアトピーの介護として必要で重要である。その後、子供は症状が更に悪化し日常生活もできなくなり、ご主人も通院を理解して、夫婦そろってきてくれた。診察すると、アトピーにヘルペス感染症と細菌感染症を合併していていた。しかし、そういうことも診断されていなかった。これらを同時に治療する内服薬を処方した。また今までの外用薬をやめ、特殊な布でのカバーをすすめ、皮膚への刺激を少なくするため入浴を1週間に1回シャワーのみとした。ステロイド塗布期間が長いので、中止後に悪化するリバウンドもよく説明した。

 その後、内服とカバーの治療で、症状は著明に改善した。両親とも非常に喜んでいた。しかし、しばらくしてリバウンドを起こした。リバウンドの説明は詳細にしていたが、両親とも実感では理解できず、質問の連絡が多く来た。その都度、丁寧に返事をして両親は理解してくれた。こういう繰り返す説明も介護で大切である。症状は落ち着いてきた。だがその後、ご主人側の祖父母が突然介入してきて、「治療法をかえなくてはいけない。」と両親を責めた。リバウンドを理解しない祖父母の誤解であったが、両親の反論も聞き入れなかった。家族の意見の不一致や葛藤は、アトピーの介護で残念だがよくある。大切なのはよく説明して理解してもらうことである。「どうしたらよいか。」と両親から何度も連絡があった。「皆さん、そろって来てください。」と、このような時に常套手段で対応したが、混乱している祖父母は聴き入れなかった。そして強引にその子供を別の病院に連れていった。そこではステロイドのリバウンドを理解できずに、入院となった。しかし治療は全身のステロイド塗布である。せっかく改善しかけたが、感染症も悪化してまた最初に戻った。子供は一旦退院したが、その後より強いリバウンドを起こした。ヘルペス感染症や特殊な細菌感染症の合併の可能性があった。子供の症状が悪化するのを見ても、祖父母はリバウンドを理解せず、再度入院を依頼した。入院すればまたステロイドの全身塗布で症状が悪化するのみである。両親は何度も連絡してきて「再入院を辞めさせたいが、どうしたらいいのか。」と祖父母の暴挙を阻止しようとした。両親にリバウンドの説明の書類と写真付きの資料を多く送り、祖父母に見せるようお願いした。両親と祖父母の激しい議論の末、ようやく祖父母も理解された。アトピーの場合、治療への理解は家族によって異なるため、家族間での葛藤もよくあり、全員の理解が大切である。また、アトピーは症状が多彩であり、家族による介護の続行が大切である。介護の方法と多彩の症状を丁寧に説明し、家族の理解を深めてもらうことが重要である。その為には家族間の徹底した話し合いが必要で、全ての家族が了解する必要がある。介護する方が理解されたいときは、理解されるまで説明を続け、誤解もとがめず、丁寧に訂正する。大切なのは、患者さんのアトピーが改善することである。

 その後、両親と祖父母は話し合いを続け、意見の一致をみた。介護の方針が違うとトラブルが生じる。それは患者さんによくない。両親と祖父母は一緒に、子供を連れて来てくれた。皮膚状態はまだまだ悪いが、診察時に詳細に説明し、祖父母は理解してくれた。その後はきちんと通院してくれた。家でも内服をきっちり飲み、皮膚のカバーもしっかりして、入浴も7日に1回シャワーを続け、皮膚への刺激をさけた。子供も次第に夜眠れるようになり、時に笑顔も見られた。学校も行くべきというアドバイスを理解して、行った。状態の悪いときは、半日だけでも行った。アトピーの介護で誤解されがちだが、家に閉じこもって治療するのは社会的な刺激がなく、改善が遅れる。また早寝早起きのリズムも狂い、適切に体の動かすこともないので不眠の原因ともなる。家で保護するのは、介護として不十分である。家で休んで社会、学校で刺激をうけるのがいい。この点でも最初はつらそうだからと小学校に登校させていなかったのは、間違いである。それも説明すると、両親も祖父母も納得して協力するようになった。 アトピーは皮膚症状に加えて、精神的な問題も多くある。社会からの逃避、不眠による昼夜逆転、家族との口論等、多彩である。一見皮膚症状とは無関係に見えるが、実は症状の改善で重要である。社会生活をして自分で改善しようという意思がないと改善しない。家族とは信頼感や安心感を持つことが必須で、口論はストレスになり、症状が長引く。これらの様々なことも、アトピーの専門家なら理解しているので、それを介護の方に判りやすく、根気強く、説明して理解してもらう。また介護する方のストレスや苦悩も察することが肝要である。

 両親の苦悩は察してあまりある。まず今のステロイド塗布では改善しないことを理解する介護以前の問題があり、遠方でも受診する必要があること、次に介護での祖父母との葛藤を解決しないといけない。理解させるのも介護であると言う認識で、できる限りのサポートをした。治療方針を両親は賛同してくれたが、理解しない祖父母の介入で、また両親に苦悩はつのり、患者である子供の状態も悪化した。最後的に家族は治療を理解し、家でひきこもるのも悪いと納得してくれた。身体と精神の介護で、次第に子供は改善し、不眠がなくなり、食事もとれるようになり、家族との会話も増えた。今まではそういうこともできなかった。その後、皮膚症状はすっかり改善し、内服もやめても症状は出ず、治癒となった。そのことを告げると、子供が素敵な笑顔で喜び、両親と祖父母も涙ぐんでいた。誤解と葛藤を克服し、愛の介護で達成した重症アトピーの治癒であった。私は治療と間接的だが、介護アドバイスとサポートを頻繫にし、アトピーが治癒したことは嬉しい。そういう真実を伝えたい。
(介護エッセイ作品集より)